蕨市の菊地医院 内科、小児科、外科、皮膚科の診療

菊地医院

内科・小児科・外科・皮膚科

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〒335-0005埼玉県蕨市錦町2-20-12 (大日本印刷工場正門そば)

菊地医院

菊地医院コラム

かぜについて

(1)かぜ・かぜ症候群とは

「かぜは万病のもと」と言われています。そのかぜを、人は年に5~6回、一生のうちに数百回、ひくと言われています。
かぜの原因はウィルスによるものが多く、そのほとんどが数日から1週間で治っていきます。しかし、かぜをこじらせると気管支炎・肺炎などになり、お年寄りや子供では命を落とす場合もあります。
医学的に「かぜ」という病気はありません。「かぜ」の定義は医学書によって様々ですが、一般的にかぜとは、「主にウィルスの感染による上気道(鼻腔や咽頭など)の炎症性の病気で、咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻づまりなどの局部症状、および発熱、倦怠感、頭痛などの全身症状が出現した状態のこと」です。西洋医学的には「かぜ症候群」と呼んでいることが多いです。
いろいろな原因でいくつかの症状がまとまって、ある特徴的な病像が作られるものを症候群と呼びます。
かぜ症状は上気道だけでなく、下気道(気管・気管支・肺)まで拡がっていることが多く、気道の炎症症状を総称する意味でかぜ症候群という病名が使われています。また消化管のウィルス感染によって吐き気・嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状と、発熱、倦怠感などの全身症状をきたした状態を「感冒性胃腸炎」「お腹のかぜ」などと呼ぶこともあります。
つまり「かぜ」は独立した病気ではなく、上気道から下気道にいたる気道粘膜の急性炎症症状、感染性胃腸炎による消化器症状などのいくつかの組み合わせの症状の総称という事になります。
広い意味では、インフルエンザウィルスによる流行性感冒(流感)、夏風邪と言われているコクサッキ―ウィルスによる感染、アデノウィルスによって起こるヘルパンギ―ナ、プール熱、手足口病が含まれます。また、クラミジア、ライノウィルス、コロナウィルスによる感染も含まれます。一方、アレルギー性鼻炎、子 供に多いはしか、風疹などはこれと区別し、かぜ症候群とは言いません。「風邪」の語源は中国医学にあります。中国医学における風の邪気、すなわち「風邪」 (ふうじゃ)によって引き起こされる、発熱や寒気などの症状をきたす病気の概念が日本に伝わり、日本ではそれを一般化して「風邪」と呼ぶようになったとの 事です。なお「風邪」は俳句では、冬の季語として扱われます。

かぜ症候群とは

 

(2)かぜの症状

かぜ症候群にはいろいろな種類があり、その症状にもいろいろな種類、程度があります。一般的に、鼻みず、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、声枯れ(嗄声)、せき、たん、頭痛、微熱、発熱、寒け(悪寒)、体がだるい(全身倦怠感)、関節痛、筋肉痛、腰痛などに加え、吐き気・嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などの胃腸症状があげられます。
乳幼児では無意識に痰をだすことができず、また鼻呼吸しかできないため、鼻みずが多すぎたり鼻がつまると、呼吸が苦しくなります。発熱とそれに伴うけいれ ん、夜間の咳による睡眠不足も見られます。またかぜに下痢症状を伴うことが多く、下痢に加え、発熱、多呼吸、嘔吐による水分の消失、吐き気、腹痛による水 分摂取の減少で、容易に脱水症になります。脱水のために痰が粘っこくなり、さらに痰が出しにくく痰が切れなかったりします。そのために嘔吐しやすくさらに 脱水が進むという悪循環を招きやすい特徴があります。

 

(3)かぜの原因

かぜ症候群の病原微生物の80~90%はウィルスであり、200種類以上もあります。
細菌によるものは10~20%です。

かぜについて

 

表1 かぜの病原体と病変

病原体(ウィルス)

病変の特徴

インフルエンザウィルス

インフルエンザ 発熱、上気道炎症状、胃腸症状

パラインフルエンザウィルス

乳児から学童期前半に多く、喉頭炎、気管支炎、肺炎などを起こしやすい

RSウィルス

特に乳児の細気管支炎の原因になりやすい

アデノウィルス

高熱を伴う咽頭扁桃炎(3型)、時に重症肺炎・脳炎(7型)、咽頭結膜熱、感染性胃腸炎

ライノウィルス

鼻かぜの50%を占める。普通感冒の主因

コクサッキ―ウィルスA群

ヘルパンギ―ナ、手足口病、無菌性髄膜炎、全身発疹症

コクサッキ―ウィルスB群

無菌性髄膜炎、全身発疹症

エコーウィルス

無菌性髄膜炎、全身発疹症

コロナウィルス

鼻かぜの15%を占める。普通感冒

レオウィルス

乳幼児嘔吐下痢症(ロタウィルス腸炎)

単純ヘルペスウィルス

アフタ性口内炎

EBウィルス

伝染性単核球症

病原体(その他)

β溶血性連鎖球菌

幼児期以後の喉頭炎の原因菌

マイコプラズマ

学童期以後の肺炎の原因菌 異型肺炎

クラミジア

咽頭炎、気道感染、異型肺炎、結膜炎

ライノウィルス、コロナウィルスで起こる普通のかぜは、鼻みずが特徴です。
アデノウィルスで起こるかぜは、のどの痛み、咳、痰などの咽頭炎症状が主となり、それに熱、全身症状が加わります。プールで感染するためプール熱とも言われています。
コクサッキ―ウィルスで起こるヘルパンギ―ナは、口、のどなどの上気道の炎症を特徴としています。胃腸にウィルスが感染すると、食欲不振、吐き気、下痢、腹痛などの胃腸症状が出現します。ひどい時には脳脊髄内にウィルスが感染し、脳炎、脳脊髄膜炎を起こすこともあります。
RSウィルス、インフルエンザウィルス、コクサッキ―ウィルスは肺炎を併発しやすいと言われています。また、アデノウィルス、エンテロウィルスは結膜炎など、眼の症状を起こすタイプがあります。
ウィルスと細菌の中間の大きさのマイコプラズマは、肺炎を引き起こしやすく、高熱を特徴としています。このようにウィルスによってかぜの症状は異なりますが、かぜをひく時は、1種類のウィルス・細菌だけではなく、同時にいくつかのウィルス・細菌などの病原微生物に感染していることが多く、そのためさらに様々な症状が出現し、また変化していきます。

 

表2 代表的な夏かぜ

 

原因となるウィルス

感染ルート

発熱

熱以外の症状

手足口病

コクサッキ―A群

飛沫感染

手、足、口の中に水疱

エンテロウィルス

腸管感染

ヘルパンギ―ナ

コクサッキ―A群

飛沫感染

++

のどに水疱

腸管感染

++

プール熱

アデノウィルス

飛沫感染

++

咽頭炎

腸管感染

++

結膜炎

夏に子供に流行しやすい感染症に、手足口病・ヘルパンギ―ナ・プール熱などがあります。これらはいわゆる「夏かぜ」と呼ばれるものです。以下に例年夏に患者が増える感染症について、特徴や経過について説明します。

■手足口病:手や足、口の中に水疱ができて、のどの痛みを伴います。発熱は微熱程度であり、1~3日間で解熱します。

■ヘルパンギ―ナ:突然38~39℃の高熱がみられます。のどに強い痛みを伴う発疹が現れ、水疱になり、まもなく潰瘍を形成します。熱は3日間程度で解熱します。

■プール熱(咽頭結膜熱):39~40℃の高熱が出て、のどが赤く腫れて強く痛み、目の充血が起こります。頭痛、食欲不振、頸部のリンパ節の腫脹などを伴います。症状は5日間程度で治まります。

 

(4)感染経路について

かぜを予防するためには、基本的な知識としてかぜがどのように感染するのかを知っておく必要があります。気道に感染し、疾病を引き起こす病原微生物の感染経路には、飛沫感染、飛沫核感染(空気感染)、接触感染(直接・間接)の3つのパターンがあります。

1) 飛沫感染: 咳やくしゃみ、会話をした際に、飛び散る水分を含んだ微粒子(直径5ミクロン以上)を飛沫といい、飛沫は粒子が大きくすぐに落下する事から、約1mの距離 内でくしゃみや咳を直接浴びて濃厚に感染を受けた時に問題となります。通常のマスク装着による飛沫予防策も有効と考えられます。(インフルエンザ・風疹・ マイコプラズマなど)

2) 飛沫核感染(=空気感染):飛び散った微粒子が空中でそのまま乾燥したり、いったん付近のものに 付着した後、乾燥して水分を含まない微粒子(直径5ミクロン以下)になったものを飛沫核といい、それが感染経路となるのが飛沫核感染です。2ミクロン以下 の飛沫核では長時間空中を漂う事ができるため、同じ部屋に一緒にいるだけでも感染します。インフルエンザでは飛沫感染の他にこの飛沫核感染も主要なルート です。空調設備のある個室への隔離や特殊なマスク(N95マスク)の着用が必要です。(結核・麻疹・水痘など)

3) 接触感染: ウィルスが付着したドアノブや手すり、電車のつり革などに触れた手で鼻や口を触ったり(間接接触)、握手やキスなどで直接触れる事のよって感染するのが接 触感染です。普通感冒の原因として知られるライノウィルスでは、飛沫感染よりもこの接触感染の方が多いと考えられています。手洗いの励行はもちろん、病原 体に応じて手袋・ガウンなどの使用、聴診器などの器具の共用禁止、消毒薬の使用、個室管理など様々な接触伝播経路における予防策が必要になります。 (MRSA、O-157、赤痢、急性下痢症、A型肝炎など)

 

(5)かぜからの合併症

通常、かぜは治りやすく、一部のウィルスを除けば命に関係ないと言われています。しかし、養生の仕方の悪い人や体の抵抗力の弱い人にとっては、余病にかかりやすく命取りにもなりかねません。
とくにインフルエンザはお年寄り、子供、病人がかかると、抵抗力・免疫力が弱いため、気管支炎、肺炎などの合併症を起こしやすいのです。
この他にもかぜの後、副鼻腔炎、扁桃炎、中耳炎などの耳鼻科の合併症も起こしやすく、かぜといってもばかにできません。
また、膀胱炎、腎盂腎炎もかぜの後起 こしやすい病気です。脳脊髄にウィルスや細菌が感染すると脳脊髄膜炎を起こし、強い頭痛、吐き気に襲われ、命に関係します。以下に代表的なかぜの合併症を上げてみます。

  • 肺炎:最も頻度の高い合併症で、かぜのウィルスにより破壊された呼吸器粘膜から二次的に、ブドウ球菌・インフルエンザ桿菌・肺炎球菌・レンサ球菌などの細菌が感染し、引き起こされます。
  • 髄膜炎:かぜに伴う髄膜炎は細菌によるものではないという意味から、無菌性髄膜炎と呼ばれます。主としてウィルス(エコー・コクサッキ―などエンテロウィルスが全 体の90%、他にアデノウィルス、ムンプスウィルスなど)の感染により、高熱と頭痛・嘔吐・項部硬直(首から肩までが板の様に硬くなる状態)などの髄膜刺 激症状で急激に発症します。通常、髄液検査により診断が確定します。
  • 中耳炎:咽頭には鼓膜の内側に通じる管(耳管)が開口しており、小児では大人に比べこの管が太く短く傾斜がないなどの理由で、容易に細菌が内耳に到達しやすい構造になっています。このためかぜを引いた後に耳を痛がる様な症状がみられた時には、真っ先に中耳炎の合併を疑います。
  • 結膜炎:鼻涙管(鼻腔と眼をつなぐ管)を介した感染や、涙目をこすることなどによる細菌感染の他、咽頭結膜熱などでは、症状の一つとして結膜炎を伴うなど比較的よく見られる合併症です。多くの場合、抗生物質の点眼薬により簡単に治癒します。
  • 副鼻腔炎:副鼻腔は鼻の周りにある頭蓋骨の空洞です。この空洞は鼻腔に通じており、かぜを引くと鼻腔にいるウィルスや細菌が副鼻腔の粘膜に伝わって副鼻腔炎を起こすことがあります。頭重感や頭痛、目の奥の痛みなどの症状がみられます。なお、蓄膿症は慢性副鼻腔炎の別名です。
  • ライ症候群:小児において極めてまれに、水痘・インフルエンザなどのウィルス性疾患の先行後に、激しい嘔吐、意識障害、けいれん(急性脳浮腫)などの症状が短期間に発 現する高死亡率の病態をライ症候群と言います。アスピリン(解熱剤の一つ)の投与との関連が指摘されていますので、インフルエンザや水痘の可能性が高い時 にはこの薬を服用しないことが大切です。
  • インフルエンザ脳症・脳炎:比較的まれな合併症ですが、いったん発症すると重症化することがありますので注意が必要です。頭痛・けいれん・意識障害などの症状で始まります。
  • 心筋炎:コクサッキ―ウィルスによる心筋炎が良く知られていますが、インフルエンザウィルスでも時にみられます。致死的な合併症になることがありますので、注意が必要です。
  • その他:そのほかの合併症としては、急性小脳失調症やギランバレ―症候群、筋炎などがあります。

 

(6)かぜと紛らわしい病気

鼻水、のどの痛み、咳など、いわゆる「かぜ症状」や発熱が見られたときに、風邪以外の病気の可能性も考えられます。「かぜをひいたな」と思ったときに大切な のは、これら「かぜ以外の病気」と「かぜ」を間違わないことです。通常、かぜならば自然に治りますが、かぜ以外の病気では治療の遅れが重大な結果をもたら すことがあるからです。以下にかぜ症候群と区別しなければならない、代表的な疾患を上げてみます。

  • 溶連菌感染症:A群β溶血性連鎖球菌という細菌の感染により引き起こされる疾患です。咽頭痛が強くのどが赤く腫れます。抗生物質が著効しますが、治療が不十分だと急性腎炎やリウマチ熱の危険がありますので、きちんと治療することが大切です。
  • 細菌性肺炎:前述のとおりに、肺炎はかぜ症候群の一病型としてもとらえられており、普通のかぜに続発する場合も少なくありません。肺炎の原因にはいろいろありますが、 細菌による肺炎を細菌性肺炎と呼びます。肺炎球菌・インフルエンザ菌・ブドウ球菌などが起炎菌として上げられます。起炎菌や発症年齢によって病態は変わり ますが、発熱・咳・痰を主症状とし、胸痛や呼吸困難などがみられます。胸部レントゲン検査で診断されます。軽いものは外来加療で治癒しますが、入院が必要 となることも少なくありません。
  • 肺結核:咳が長く続き、微熱(寝汗をかく)が見られるときには、肺結核を疑って、胸部レントゲン検査などを行う事が大切です。少なくなったとはいえ、結核は無くなったわけではありません。
  • 胸膜炎:胸膜(肺を包んでいる膜)の炎症で、細菌・結核菌・癌などが原因となります。発熱・胸痛・咳などがみられ、胸水がたまります。聴打診所見からその存在が疑われ、胸部レントゲン写真で診断されます。
  • 肺癌:いわゆる癌年齢の方、ヘビースモーカーの方は要注意。なかなかかぜが治らないという場合に、肺癌だったりすることがあります。胸部レントゲン写真、CT検査、痰の細胞診、気管支鏡検査などにより診断されます。
  • クループ症候群:声を出すところ(喉頭といいます)が細菌やウィルス感染により炎症を起こして腫れる病気で、犬が遠吠えをするときのような独特の咳が出ます。ひどくなると 息を吸うときにゼ-ゼーと音がするようになります(喘息または喘息性気管支炎の時は、息を吐くときに音がしますので区別できます)。乳幼児では、夜間突然 呼吸困難発作(息苦しがり、息を吸うときに音が出る)を起こすことがありますので、早めの治療が大切です。寒い季節に多く、3か月~3歳の乳幼児に好発 し、6歳以降はまれです。
  • 伝染性単核球症:Epstein Barrウィルスやサイトメガロウィルスにより引き起こされる疾患で、発熱、咽頭炎、扁桃炎、リンパ節腫脹などで発症します。肝機能障害の見られることもあります。診断には血液検査が必要です。
  • 急性肝炎:発熱・頭痛・咽頭痛などのかぜ症状で発症することがあります。経口感染するA型肝炎とE型肝炎に注意が必要です。全身倦怠感(だるさ)が強いのが特徴。黄疸が見られるときには可能性が強まります。血液検査が必要です。
  • 急性腎盂腎炎:腎実質の細菌性感染症です。悪寒(さむけ)・戦慄(ふるえ)を伴った高熱がみられ、腰の付近を叩いて痛がるときにはこの病気が疑われます。排尿時痛などの膀胱炎症状が先行することもあります。尿検査と血液検査を行い診断します。
  • 麻疹:はじめ熱・咳・鼻水・目やになど通常のかぜと同じ症状が出ます。この時期には麻疹と診断することは困難です。4日目くらいに一度熱が下がりますが、半 日~1日後に高熱とともに発疹が出ます。発疹はほぼ円形の紅い斑点で5mmくらいの大きさです。顔から始まり全身へと拡がっていきます。約5日くらいで熱 も下がり、発疹も消えていきますが、高熱が1週間以上続きますので、早めに予防接種を受けておくことが大切です。
  • 風疹:風疹ウィルスの飛沫感染により発症します。3日ばしかとも言われ、軽い発熱とともに顔や首などに小さくて赤い発疹が出ます。耳の後ろや首のリンパ節が腫れ て押すと軽い痛みがあります。熱は出ない事もあり、風疹以外にも同じ様な症状を示すウィルス感染症(感冒性発疹)がありますので、確定診断には血液中の抗 体を調べる必要があります。
  • 髄膜炎:主としてウィルスの感染により、発熱と髄膜刺激症状(頭痛・嘔吐・項部硬直)などの症状を呈する急性感染症です。高熱に頭痛と嘔吐が伴い、重症感のある時にはこの病気を疑って必要な検査をすることが大切です。かぜ症候群の合併症としても起こります。
  • アレルギー性鼻炎:通常季節性で、透明な鼻水に目のかゆみ(アレルギー性結膜炎)を伴う場合には可能性が高くなります。アレルギーの検査をすることにより診断が確定します。通常、発熱や咳はみられません。
  • 急性中耳炎:通常、耳の痛みがみられます。乳児などでは、発熱の症状のみしかみられず、いわゆるかぜ症状が無い場合には、本疾患を疑ってみる必要があります。
  • その他:膠原病なども発熱で発症することがあります。熱以外に膠原病に特有の症状がいろいろな組み合わせでみられます。

 

(7)かぜの治療法

「かぜは万病のもと」と言われます。かぜの原因のほとんどはウィルスが原因ですが、インフルエンザ以外の大部分のかぜは症状が軽いので、原因となるウィルスも特定されず、かぜ(かぜ症候群)として診断され、治療が施されているのが現状です。
かぜ以外の重篤な病気の初期にでも、同様の症状を呈しかぜと診断され、経過観察される場合もあります。またかぜによって体力や免疫力が弱っているとき、肺炎などを二次的に引き起こす場合もあることから、「かぜは万病のもと」と言われているのだと思います。
通常、1年に5~6回、多い人では10回以上かぜにかかっています。その度にお医者さんにかかり診察を受けるのならば、かぜは内科医師の貴重な収入源であ り、“かぜ様々”ということになります。しかし、近年に至るまでかぜのウィルスに効く薬はなく、特に日常的にかぜに対して外来でよく処方される抗生物質 は、ウィルスに対しては全く効果を期待できません。
かぜに効く薬ではなく、かぜによって起こる様々な症状をやわらげるのがかぜ薬であると思います。熱や頭痛・関節痛には解熱鎮痛剤、咳には鎮咳剤、痰のよく出る人には痰を溶かして出しやすくする去痰剤、あるいは痰を出しやすくする気管支拡張剤、のどや鼻の炎症を抑える抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤、リゾチームなどの消炎酵素剤などがいわゆるかぜ薬であると考えます。
これらの薬は、かぜによって引き起こされる好ましくない症状をやわらげるための治療薬であり、この様な治療は対症療法と呼ばれ、根本的な治療ではありません。
また、抗生物質は二次的な感染の予防や、まだ診断できていない他の病原菌による感染に対処するために投与される場合があります。これはかぜのウィルスに効果 のあるものではありませんが、かぜによって引き起こされる合併症の発生を防いでいます。しかし、このかぜのウィルスには効果のない抗生物質の濫用や過剰投与が、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの抗生物質の効かない菌(耐性菌)の出現の原因の一つになっています。

 

1)かぜ症候群の治療の考え方

かぜ症候群をはじめ、急性気道感染症の治療においては、原因微生物を特定した上での薬剤投与が望ましい事は言うまでもありません。しかし、時間も設備も限ら れた実地の臨床診療の場では、症状や身体所見のみから判断を下し、薬剤を選択しなければならない状況にも対応する必要があります。かぜに対する治療を行う際に最も重要なことは、患者さまの背景を考慮した上で薬剤を選択し、治療を進めることであると考えられます。
具体的には、基礎疾患を有さない低リスク患者については、ウィルス感染である可能性が高いため、基本的に抗菌薬の内服の適応はありません。
しかし、ウィルスの上気道粘膜への先行感染に細菌感染を続発することもあるため、低リスク患者の中でも細菌感染を疑わせる症状・所見がある場合には、適正に抗菌薬を用いる必要があります(表3の(1)~(5))。
一方、心臓・肺・腎臓疾患などの基礎疾患を有し、普段から通院を要するような高リスク患者(表3の(6))では、急性気道感染症を発症することにより、二次 感染の合併を引き起こす危険性が高くなります。そのため、抗菌薬を投与し、二次感染の予防を徹底する事が重要であると考えられます。

 

表3 かぜで抗菌薬の適応と考えられる患者様の症状、所見

〔1〕高熱の持続(3日間以上)

〔2〕膿性の喀痰、鼻汁

〔3〕扁桃腫大と膿栓・白苔付着

〔4〕中耳炎・副鼻腔炎の合併

〔5〕強い炎症反応(白血球増多、CRP陽性、赤沈値の亢進)

〔6〕ハイリスク患者

[1]65歳以上の者

[2]養護老人ホームおよび長期療養施設入所者で、慢性疾患を有する者

[3]肺および心血管系に慢性疾患を有する成人や小児

[4]糖尿病、腎疾患、免疫不全を有する者

[5]インフルエンザ流行期に妊娠中期~後期にかかる予定の妊婦

(日本呼吸器学会/呼吸器感染症に関するガイドライン成人気道感染症診療の基本的考え方より抜粋)

 

2)解熱剤について

発熱は一種の生体防御反応であり、人体というのは、あえて体温を高めることで免疫力を上げていると言われます。例えば、白血球は病原菌に対する貪食作用・殺菌能などを有していますが、その白血球は、体温が平熱より1度下がると30%以上働きが低下し、逆に平熱より1度上がると5~6倍の働きをするという事が明らかになったそうです。
西洋医学を学んだ医師の多くは、体温が多少上昇するだけでも対症療法として、すぐに解熱剤を処方することが多いと指摘されています。
しかしこのことは免疫の働き(自然治癒力)を低下させて、かえってかぜを長引かせている可能性もあるとも指摘されています。
ただし、体温の上昇が極端に激しい場合には、危険回避のために解熱剤を使用する事は正しいと考えられます。また幼児や児童などの場合には、体温の上昇には大人以上の注意を払う必要があります。

 

3)総合感冒薬について

いわゆるかぜ薬(総合感冒薬)というのは、かぜの諸症状に対する薬が何種類も配合されています。
一般的に、〔1〕熱を下げて痛みをやわらげる成分、〔2〕鼻水を止める成分、〔3〕咳を抑える成分、〔4〕痰を切れやすくする成分などが配合されています。
のどが痛くなくても、熱が出ていなくても、この様な薬を服用すれば、のどの痛みをやわらげる成分や熱を抑える成分も飲んでしまう事になります。
薬である以上何らかの副作用を有すると考えられますので、必要のない成分を服用して副作用だけが出てしまったり、熱が出ているのか出ていないのか(熱型)を不鮮明にしてしまうなどの、好ましくない結果がもたらされることも考えられます。
かぜ気味だというだけではっきりした症状もないのに、この手のかぜ薬を安易に服用するケースも見られますが、注意が必要です。

治療の方法は

かぜ症候群のときの食事

 

4)かぜの治療 Q&A

『かぜは人にうつすと治る』

Q よくかぜは人にうつすと治ると言いますが・・・

A これは日本において古くから言われている迷信で、全く医学的根拠のないことです。かぜがうつっても1~3日間の潜伏期間があり、その間は自覚症状はほとんどありません。
また発病して数日でかぜは治ってしまいます。かぜが治るのは、体の中にインターフェロンというかぜのウィルスが増殖するのを抑える物質ができ、リンパ球などの免疫担当細胞がかぜのウィルスをやっつけてくれるからです。
うつした者が上記のメカニズムで快方に向かう頃に、うつされた者が発病することから、そのようなことが言われるようになったのではないかと思います。


『かぜに卵酒』

Q 卵酒はかぜに効くのでしょうか?

A 昔からかぜのひき始めに効くとされている卵酒ですが、卵は栄養価が高く、卵白に含まれる酵素のリゾチームが細菌を殺し、アルコールで体が温まって熟睡できる、という理論からきているようです。
実際に効くと実感している方もいらっしゃるでしょう。科学的に有効といえるかはわかりませんが、お酒や卵が合わない体質でなければ、試してみても良いでしょう。


『かぜの時にお風呂はダメ?』

Q 「かぜをひいたらお風呂はダメ!」というのはホントでしょうか?・・・

A 昔はかぜをひいたらお風呂はダメというのが常識でした。しかし、最近ではかぜ気味でも熱がなく元気であれば、お風呂に入ってもかまわないと良く言います。
1日を通して37.5度以下でしたら、湯冷めに気をつけてお風呂に入れてあげてください。
お風呂の蒸気はのどに適度の湿り気を与え、皮膚を清潔にして新陳代謝を高め、さっぱりすることでぐっすり寝られるなど、お風呂にとの良い点が見直され、最近では「かぜ気味=お風呂はダメ」という従来の考え方は考え直されてきております。


『かぜの時に注射をすると早く治る?』

Q 「早くなおしたいから注射をしてほしい」という方がおられます。注射をすると本当に早くかぜがなおるのでしょうか?

A 残念ながら、注射をしたからといってかぜが早く治るということはありません。
かぜを治す薬はまだできていません。かぜの場合、対症療法として症状をやわらげる薬を使用したり、二次的な肺炎などの合併症を防ぐために薬を使うのが一般的です。
これらの薬は内服薬で十分であり、むしろ内服薬の方が種類も多く治療効果も勝ると考えられます。
抗生剤を注射で投与するというのは、明らかな細菌感染症で重症の場合を除き、治療効果・副作用の点からも望ましいことではありません。医者に行って注射をしてもらったから元気が出たというのは、心理的な効果がプラスされていると思われます。


『かぜが早くなおるような薬・食事』

Q かぜが早くなおる様な薬や食事はありますか?

A かぜの種類にもよりますが、かぜは薬や食事だけでは早く治りません。水分と栄養をきちんととって、温かくしてじゅうぶん寝る。やはりこれに限ります。
インフルエンザの初期にウィルスを抑える薬はありますが、ほとんどのかぜ薬は症状をやわらげるためのものですし、かぜが早くなおる特別食もありません。
かぜをひいている時に、無理をして激務をこなすなどはもってのほかであり、過労や睡眠不足から抵抗力が弱まり、二次的な合併症を引起こしかねません。
他人に感染させないためにも自宅で集中して休み、体力を回復させましょう。

栄養・水分・休養

 

【参考資料】

  • (1)呼吸器感染症に関するガイドライン 日本呼吸器学会
  • (2)小児呼吸器感染症診療ガイドライン 日本小児呼吸器疾患学会 日本小児感染症学会
  • (3)風邪の谷の直弼
  • (4)風邪をひかないためのガイドブック 中央労働災害防止協会
  • (5)かぜ症候群のときの食事
  • (6)EBMによる呼吸器領域の漢方の使い方
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